プレイ前のお風呂を楽しむブログ:2017年04月17日
ワールドカップの日本代表を応援するため、
親父がはちまきを買ってきた。
親父はそのはちまきを締め、
日本酒を片手にテレビの前を陣取っている。
「こういうのはな、団結が必要なんだ。気持ちで勝負だ。ここに味方がいるぞ!」
あきれる俺たち家族をそっちのけに
親父は大声で選手と一緒にボールを追っていた。
それを機に孫である、
俺の女の子のトレーニング会にも
親父ははちまき姿で登場した。
周囲のくすくす笑う声もなんのその…
女の子も祖父の必要以上の応援に少し気恥ずかしげに、
もじもじしている様子。
熱い応援も功を奏すことはなく、
徒競走では、思いっきり転んでしまい
結果はびりから二番目だった。
そんな折、
親父のお母さんである
俺の祖母が認知症の症状がひどくなり、
施設に入院することとなった。
九十歳に近い祖母は家族の顔はすっかり忘れ、
孫である俺のことはもちろん、
自分が産んだむすこのこともおぼろげになっていた。
祖母の入院する施設に親父と俺で会いに行った。
親父の顔を見ても、恭しくお辞儀をするだけの祖母。
親父は何と声をかけたらよいか迷っているようだった。
無言の時間がどれだけ続いただろう…
親父は自分の汚れたズボンのポケットから
例のはちまきを取り出した。
そして、そっと、祖母の真っ白な頭に巻いてやった。
「気持ちで勝負だよ、母ちゃん。
ここに味方がいるぞ。家族はいつでも母ちゃんの味方なんだよ!」
そう、声をかける親父の目には涙がにじんでいた。
俺は後ろで声を押し殺して泣いた。
祖母はやわらかく微笑んで、そのはちまきを触っていた。